【心療内科医監修】婚活で役立つACTをやってみよう|アクセプタンス&コミットメント・セラピー
結婚相談所イノセント
心療内科医
こんにちは!心療内科医の内田さやかです。
私が心療内科の現場でも非常に大切にしているのが、ACTと呼ばれるセラピーです。
ACTとは、「アクセプタンス&コミットメント・セラピー(Acceptance and Commitment Therapy)」の略で、私たちは「アクト」と呼んでいます。
婚活で悩んでいる方にもとても役立つ考え方なので、今回は坂田代表や永島代表と一緒に、実際にワークショップをやってみようと思います。
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)とは?
今までのコラムで「まずはこういう自分に気づこうよ」という話をしてきました。それで、気づいたそのあとの対策の話も多少はしましたが、そこも含んでいるのがACTの良いところなんです。
気づいた上で、次どうする?という行動活性の要素が含まれているので、なんとなくもやもやしている人は、ACTをやってみると一歩を踏み出すのに良いと思います。
ACTは「じゃあそのあとどうするの?」って取り組んでみたい人向けです。
私は医師なので、心理学の専門家ではないですが、「心理的柔軟性」と「自分の大事な価値に根ざした生き方をしていこう」をゴールに、その人らしい人生を支援できるアプローチなのがいいんです。
先日、対人関係のコラムで「思考のストレッチ」の話をしましたよね。「凝り固まった考え方をほぐそうよ」というお話です。
「心理的柔軟性」はそれと似ていて、まずはしなやかな心になろうというところ。もうひとつは、自分の大切なものとか、自分の大事な価値観に根ざした生き方をしていこう!がゴールなので、このふたつに向かうセラピーが、ACTなんです。
「アクセプタンス」は、自分の良い面も悩んでいる面も、他人や社会の良い面も悪い面も、ジャッジせずに一旦受け止めてみようという意味です。
そして、そういう自分や社会を認識したうえで、でも自分が価値に根ざした生き方をするにはどうすればいいか?見つけたなら行動していこう!というのが「コミットメント」。
その2つをつなげて、「アクセプタンス・コミットメント・セラピー」ということです。
せっかくなので、今日は坂田さんと永島さんにもやっていただこうかと。
イノセントにも本当にいろんな会員さんがいて、相談を受けていても何が言いたいのか自分でもよくわかっていない方が多いんです。
自分の中で悩んでぐるぐるしているから、結局何に悩んでいるのかわからなかったり。
でもたしかに、自分が悩んでいることや、大切なものをクリアにするのって難しいことなんですよね。
なのでそういう方は、今日やっていただくACTのワークを通して少しでも考え方をわかってもらえたらなと思っています。
ACTのワーク
内田:ではせっかくなので、ACTのワークをひとつやってみましょう。
坂田&永島:よろしくお願いします!
内田:ノートとペンがあれば誰でもできる簡単なワークなんですが、できれば白い紙に書いてもらったほうがいいので、各自用意していただけますか?
準備
まずはこういう、四象限を書いてみてください。真ん中に◯、左右と上下に矢印があります。
それぞれの矢印の先に、
上:行動
下:マインド
左:離れる
右:近づく
と書きます。
下半分はマインド、つまり目に見えない心の声、気持ち、体の感覚を書く。
上半分が行動、つまり目に見える動きを書く、ということです。
右下には、価値をおいていることや、価値に近づけている時の気持ち、感覚を書きます。
ただ、意外と、「大切なもの」が出にくい人もいるんです!
そのため、今日は後回しにします。
はじめはガイドを受けながらやった方が埋めやすいですが、慣れれば1人でもできるワークです。
ステップ①
では、左下からはじめましょう。
何か自分が行き詰まっているとき、どんな思考、感情、感覚が出てきますか?
「こういう思考嫌いなんだけどな」と思いながらもよく自分の頭の中に出てきちゃうこととか、そんな状態のときの体の感覚や不快感(動悸、胃がキリキリ)とかを、書いてみてください。
■書き方のポイント
この時点で、右下の価値は見えなくても、見えていてもOKです。
どちらもあると思うので、そのままで、左下を書いてみる。
自分の大切な価値や行動から離れてしまっているとき、満たされないとき、自分にはどういう心の内があるのか。体の感覚面では何か出てくるのか。
価値は何らかあるけど、その価値を大切にできていないときって、どうしてもあると思います。
そんなときに自分ってどうなるっけ?そういう自分をどう思うか?と考えて書くと、うまく言葉が出やすいかもしれません。
ステップ②
次は、左上です。
価値から離れているとき、自分はどういう行動を取るか。もしくは、左下のマインドに陥っているときに自分はどういう行動を取るか。
ビデオカメラで撮影できるような動き、目に見える動き、これを書いてください。
たとえば、自暴自棄になっている行動もあれば、対処したくて出ているセルフケア的な行動もあると思います。
■書き方のポイント
もし書けたら、その行動が短期的に有効なのか、長期的に有効なのか、有効度(ワーカビリティ)で分けられるなら、ひとつずつ分けてみましょう。
左上に出てくるのは、左下の感情を緩和するために取る行動になっているはずなので、左上のその行動をしたとき、短期的に見たら左下の感情はどうなる?長期的に見たらどうなる?という視点で考えるとわかりやすいかもしれません。
対処行動の中には、短期的には有効だけど、長期的にはよくないよね、ってものもあるはず。
たとえば前のコラムでもありましたが、婚活で上手くいかない人が、上手くいかない理由をつけて納得することってありますよね。
その理由付けって、短期的な効果はあると思うんです。逃げるとか、見て見ぬ振りとかと同じです。でも長期的に見たら、前に進めていなかったり、実際はマイナスになっていることがあったり。
もちろん人間、左上をしないと生きていけないので、当然いろいろ出てくるとは思うんですけど、それが短期的に有効なのか、長期的に有効なのか、自分はどういうパターンが多いのかを見てみてください。
ステップ③
ぐるぐるしている気持ちなり、そのときにやっている行動なり。
で、そんな自分に対して、別の人間として声をかけてみましょう。
今の自分でも、80歳になった自分でもいいですけど、左の行動をとってる青年がいたら、自分ならなんて声をかけますか?
「悩みはつきないよね」とか。
左に書いてることって、ずっと考えてることなんですよね。だから状況がかわっても考えてるし、たぶん30年後も考えているよって。笑
今やっていただいたのは、感情と行動を分ける作業です。左下と左上ですね。
私たちって、思った瞬間行動しちゃうことが多いんですが、気持ちは気持ち、行動は行動って、感情と行動を分けることってすごく大事なんです。
初めてのときは書きづらさもあると思いますが、何回も書いていくうちに書けるようになってきたり、前回と今回でここは変わらないとか、だんだん素直に書けるようになってきたり、ACTマトリックスと言ったりするんですが、変化を感じられると思います。
ステップ④
今書いてもらった左側は、良いでも悪いでもなく、「アクセプタンス」なので、まずはこんな自分を見てみる、という作業です。さらに、「マインドと行動を分ける」作業をしてもらいました。
そのうえで、次は右上を埋めましょう。
左側を見て、こんな自分はいるんだけど、本当は価値に近づきたいよね?じゃあ、そのためにどんな行動をとったらいいかな?よく左上の行動をとっちゃうけど、それは価値から離れる行動で、じゃあ価値に近づく行動ってなんだろう?と考えて、書いてみてください。
あとは、左下から右上に「ハシゴをかける」って言うんですけど、ぐるぐる悩んでいる中でもできるアクションってなんだろう?と考えて、思いつくものをいくつか書いてみましょう。
そんな時は、「今の自分でも、できそうな行動はなに?」「すでにやってるものあるかもよ?」と探ってみてください。
ステップ⑤
残すは、右下です。満を持しての登場です。
「自分が人生において大切にしているもの、大切にしている人、大切にしていること」を書いてください。あなたは、どんな人生を歩みたいですか?
やってみてほしいのは、もし単語で出てきちゃった場合、「なぜ?」「なんでそれなの?」ってもう一踏ん張り、深堀りすること。
なんで家族が大事なの?なんで友達なの?そこにはどういう感情があって、あなたが大事にしたい感情はどんなの?って、抽象度を上げてほしいんです。
■書き方のポイント
ここまでに、「価値らしきもの」を想定しながら、左側も、右上も書いてきました。
それらも振り返りながら、最後の1マスを埋めてみましょう。
ちなみに、ACTにおける価値とは、「継続しうる行動について、あなたはどのようにやる?どのようにやることを望む?という行動の性質である。」とされています。
抽象度を上げるというのは、そういう意味です。
最終ステップ
最後の仕上げは、真ん中の◯。
この4つは、誰の視点で書きましたか?という質問です。
だいたいは「私」だけど、だとしたら形容詞をつけて、どういう私?これを書いた私ってどういう視点だった?というのを書いてほしいです。
これは意外とひっくり返してみると、親の視点が入ってしまっている人もいます。 この価値も自分の価値じゃなくて、親から刷り込まれた価値だったり。「母」が出てきたりすることもあるんです。
あとは「世の中」とか。別に自分にとっての価値じゃないのに、社会で価値があると思うものを書いてしまっている私、とか。
ワーク終了
あと、中にはやっぱり言葉が出づらい人もいるし、ガンガン書ける人もいます。このマスはスラスラかけるけど、ここは書きづらいとか、人によっても違ってきますね。
今日は1回のワークで全部埋めてしまいましたが、実際のACTのセラピーだと、セッションを10回とかやりながらゆっくり進めていきます。
右下を探るためのエクササイズがあったり、それぞれをもっと丁寧に学んでいくんです。
今日はACTがどういうものかわかっていただくために、ACTらしさが伝わるワークのひとつをご紹介しました。
定期的にやってみる
これもACTの良いところなんですけど、「T」をセラピー(Therapy)じゃなくトレーニング(Training)に変えて使われることもあります。
アクセプタンス&コミットメント・トレーニングにして、たとえば婚活している人とか、お仕事をされている社会人とか、病気じゃない人にも適用できるよねと言われているのが特徴です。
今日はACTの触りの部分だけやった感じだと思いますが、こうやって書き出してみると頭の整理になりますね。
定期的にやると良いかも。
何度もやっていると、私って意外とこういうこと考えてたんだって見えるのがおもしろいんですよ。
日々を生きていると自分にとっての右下がアップデートされることも十分ありますし、
・自分にとって大切なものや価値ってなんだろう?
・それに近づく行動ってなんだろう?
・私ってその行動がちゃんとできているかな?
というところを考えられると、もっとシンプルに生きられるかもしれないし、仕事でも婚活でもナチュラルな自分で、もっとシンプルに進められるかもしれません。
頭の中って整理できないから、だから何していいかわからなくなるんですよ。
会員さんでも、「電話していいですか」と言える人は大丈夫なんです。自分でもんもんと考えていることを聞いてもらって、話して整理するみたいな側面もあるので。
だから、電話で話したりするのが苦手だったり、相手がいない人は、ACTをやってみると良いかもしれないですね。
ACTの良いところは、答えを相手に見せなくてもいいところなんですが、みんなでやる場合は、「どうだった?」って感想のシェアは結構効果があるのでおすすめです。
セラピーでマンツーマンでやるときは、見せていただいて、「これどういう意味?」とご質問を投げかけることもします。
コミットメントすること
だから、右上に出てきたことをちゃんとやろうってことです。
担当者に見せることで、頑張ろうってエンジンをかけられそうです。
コミットメントですから。
私がACTの好きなところでもあるんですが、コミットメントが入っているので、単なる気づいて終わりじゃないんです。
途中でハシゴをかけるって話をしましたけど、左下のマインドを抱えながらでも、右上の行動はできるんです。
少し前の「ひねくれさん」のコラムでお話しした、「すみませんじゃなくてありがとうと言ってみよう」というのとすごく似ていて、心が追いついていないかもしれないけど、価値に根付いた良い行動なんじゃないかと思ったことは、どんどんアクションしていこう、まずはやってみよう、ということです。
ACTのワークを終えて
最終的に自分で答えを見つけるということが、すごく大事なポイントです。
誰でも悩んだときや問題にぶつかったときに、「どうしたらいい?」って誰かに相談したり、誰かのツイートに対して「答えも教えてくれ」ってなりがちですけど、やっぱり自分のことなので、自分で答えを出すことに意味があるのだと思います。
最適解は、自分で見つけてこそだと思います。
ひとつひとつ正解を確認したい気持ちはわかりますけど、それくらい決められないでこの先上手くやっていけるか?って考えてみてほしいです。
ACTワークまとめ
<準備>
・白い紙とペンを用意する
・真ん中に◯を書く
・左右上下に矢印を書く
・矢印の先に、上は行動、下はマインド、右は近づく、左は離れると書く
<ステップ①:左下>
・行き詰まっていること
・悩んでいること
・頭の中に出てくる嫌な思考
・ダメな自分
<ステップ②:右下>
・自分が大切にしている価値
・人生で大切なこと、もの、人
◎ポイント…単語は「なぜ?」と深堀りする
<ステップ③:左上>
・右下から離れているときに取っている行動
・左下に陥っているときにとる行動
◎ポイント…有効度で分ける
<ステップ④>
・左側の人間臭い自分に、別の人間として声をかけてみる
<ステップ⑤:右上>
・左から価値に近づくために取るべき行動
・左下で悩んでいる中でもできる行動(ハシゴをかける)
<最終ステップ:◯>
・誰の視点で書いたか、◯に書く
・「私」ならどんな私か、形容詞をつける
※定期的にやってみる
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結婚相談所イノセント 心療内科医
内田 さやか
日本医科大学卒。東邦大学医療センター大森病院にて心身医学を学ぶ。
IT企業を中心とした複数企業の産業医を担当。
会員制のプライベートサロン「 SAHANA(サハナ)」運営。
困っている方のお話にじっくり耳を傾け、必要なサポートを本当に必要としているひとのもとに届けたいと考えています。心療内科医の立場から、科学的根拠も交えつつ、少しでも前向きに婚活ができるようなお手伝いができれば幸いです。
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